しらいしファーム新聞
ウーファーと島と世界をつなぐ、ちいさな新聞
特集 海士町×農業
「ない」ことが、畑の強みになる。
海士町は、農業をするには案外いい場所なのではないか。
本土の農家を悩ませるイノシシ。海士町では、こうした大型の獣を心配しながら畑へ向かうことがありません。(写真はイメージ・本土で撮影されたもの)
草は、待ってくれない
海士町は、農業をするには案外いい場所なのではないか。みかん畑で草を刈りながら、ふとそんなことを考えます。
もちろん、楽な仕事ではありません。今年の夏も、真昼の暑さを避けながら、草刈りなどの作業を続けてきました。こちらが暑さで休んでいても、草は待ってくれません。
雨の少ない8月と、今年の甘さ
僕の畑では、今年の8月はとりわけ雨が少なく感じられました。その影響もあるのか、今年のみかんは甘く仕上がっているのでは、と期待しています。これは、まだ糖度の数字で比べた話ではなく、育てている僕の実感です。
暑さも、雨の降り方も、昔の感覚だけでは読みにくい。これまでの経験を大切にしながら、目の前の変化に合わせることも必要になってきました。
昭和30年ごろから続く、崎のみかん
ただし、この島のみかん作りは、最近の温暖化から始まったものではありません。崎地区では昭和30年ごろからみかんが栽培されてきました。僕たちは、先人が育ててきた畑と営みを受け継いでいます。
クマもイノシシも、心配しない畑
そんな日々の中、本土の獣害の話を聞くと、あらためて気づくことがあります。ここでは、クマやイノシシを心配しながら畑へ向かうことがない。普段は当たり前になっていますが、農業をするうえで、これはありがたい条件ではないでしょうか。
それでも、お客さんはやって来る
もっとも、みかんを狙うお客さんはいます。メジロなどの小鳥が実をついばみ、僕の畑では例年、12月中旬ごろになるとカラスの大群がやってきます。丹精込めたみかんが、一気に食べられてしまうこともあります。かわいい鳥だからと、笑ってばかりもいられません。
雑草魂コラム 「ない」ことは、不便さだけじゃない
草も生える。鳥も来る。暑さにも、雨にも悩まされる。それでも、大型の獣による被害を心配せずに作物と向き合える。この島には、農業を続けるうえでの確かな強みがあると感じています。「ない」ことは、不便さだけを意味するわけではない。畑を荒らす獣がいない。その安心も、この島の財産です。海士町は、農業をするには案外いい場所なのではないか。ここで暮らし、みかんを育てている僕は、そう思っています。今年の崎みかんは、11月1日から受付開始です。

写真:イノシシ belvedere04(CC BY 4.0)/メジロ Toshihiro Gamo(CC BY 2.0)/カラス Laitche(CC BY-SA 4.0)。いずれもWikimedia Commonsより、サイズを調整して使用。
← しらいしファーム新聞の一覧へ